給与は総額で記録しよう。
この講座は、税理士である管理人が家計簿の付け方について解説する講義です。
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家計簿において、給与の記録はどのように行えば良いのでしょうか。
今回の講義では、そんな給与の記録方法について解説していきます。
ぜひ、皆さんも正しく給与を記録してみましょう。
給与を総額で記録するってどういう意味?
給与の総額記録とは?
僕たちが受け取る給与からは、様々なものが足し引きされて支払われています。
そんな給与の記録には、
総額記録と純額記録
という、2つの記録方法があります。
総額記録とは、
様々なものが差し引かれる前の金額で記録する方法
のことです。
一方、純額記録とは、
様々なものが差し引かれた手取金額で入力する方法
のことです。
例えば、次の例で考えてみましょう。
- 給与総額: 200,000円
- 給与から差し引かれる金額: 50,000円
- 実際に支払われた金額: 1.-2.=150,000円
この場合、総額記録では
収入200,000円と支出50,000円
として記録します。一方、純額記録では、
収入150,000円
として、相殺された金額を記録します。
この内、家計簿における給与の記録は、
総額記録がオススメ
です。
給与の総額記録では、次の3つの項目を記録します。
- 支給項目
- 控除項目
- その他の項目
以下では、これらについて詳しく解説していきます。
支給項目の記録
支給項目とは、
勤務先から支払われる金額
のことをいいます。
具体的には、
- 基本給
- 通勤手当
- 残業手当
- 役職手当
- 資格手当
などがあり、職場によっていろいろな名前の手当が支給されています。
家計簿を記録する場合、支給項目は
通勤手当とそれ以外
に分けて記録する方法がオススメです。
例えば、給与明細を見たときに、
- 基本給: 300,000円
- 通勤手当: 10,000円
- 役職手当: 20,000円
- 残業手当: 30,000円
- 総支給額: 1.~4.の合計額=360,000円
と記載されていたとしましょう。
この場合、
- 通勤手当: 10,000円
- 給与: 350,000円
と記録します。
通勤手当だけ分ける理由は、次の2つがあります。
- 通勤手当は、自分で支払った通勤費用の補填分だから。
- 通勤手当は、所得税がかからないから。
通勤手当を別で集計することで、
あくまで自分が働いて稼いだ金額のみを集計
することができます。
また、所得税がかからない通勤手当を排除することで、
いくらの給与に対していくらの所得税がかかったのか?
を確認することができるのです。
控除項目の記録
控除項目とは、
給与から天引きで支払われている保険料や税金の金額
のことで、具体的には次の6つがあります。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 介護保険料
- 雇用保険料
- 所得税
- 住民税
家計簿を記録する場合には、控除項目は
それぞれの項目毎に分けて入力
するのがオススメです。
なお、厚生年金については、
厚生年金基金
という項目がある場合もありますが、この金額がある場合は
厚生年金保険料に加算
して記録するのがオススメです。
また、毎年12月か1月分に支払われる給与では、
年末調整
によって所得税の一部が戻ってきたり、追加で天引きされたりします。
この年末調整については、次のように処理するのがオススメです。
- 戻ってきた場合→家計簿の収入項目に「年末調整」として入力する。
- 追加で天引きされた場合→「所得税」として記録する。
その他の項目の記録
その他の項目とは、
支給項目と控除項目以外の項目
のことをいいます。
具体的には、次のようなものがあります。
- 旅行積立金
- 社員食堂利用料
- 立替経費清算額
この他にも、社内規定で独自の項目を設定している場合もあります。
家計簿を記録する場合、その他の項目については
その項目の性質毎に処理
する必要があります。
例えば、社員食堂利用料については、昼食代であるため、
外食
として処理するのがオススメです。
また、旅行積立金や立替経費清算については、そのとき自分が負担する金額ではないので、
収支の計算対象から除外
するのがオススメです。
給与計算の方程式
ここでは、給与の総額記録について、
- 支給項目
- 控除項目
- その他の項目
の記録方法を詳しく解説しました。
これらの項目については、
支給項目-控除項目±その他の項目=実際の支払額
という方程式が成り立ちます。
一通り給与の記録が終わったら、記録した数字を電卓で検算して、実際の支払額と一致していることを確認しておくのがオススメです。
なぜ総額で記録すべきなの?
総額記録をすべき理由
家計簿において、給与を総額記録すべき理由としては、次の2つが挙げられます。
- 給与が正しく支給されているか確認するため。
- 給与の中身を正しく把握するため。
以下では、これらの理由について詳しく解説します。
給与が正しく支給されているか確認するため
給与を総額で記録すべき理由の1つ目は、
給与が正しく支給されているか確認するため
です。
給与を総額で記録していると、
- 残業代が入ってきてないな。
- なんか知らないものが天引きされているな。
など、様々な気付きがあります。
給与の計算や支給は、必ず正しく計算されているとも限りません。
実際、僕は以前残業代が支給されていないことがありました。
職場にそのことを伝えると、手違いで支給し忘れていたとのことで、翌月にまとめて調整してもらいました。
これは、給与を総額記録していなければ気づかなかったものです。
このように、給与が正しく支給されているのかを確認するために、総額で記録することはとても大事なことです。
給与の中身を正しく把握するため
給与を総額で記録すべき理由の2つ目は、
給与の中身を正しく把握するため
です。
あなたは、健康保険や年金、所得税、住民税を1年間でそれぞれいくらぐらい支払っていますか?
ざっくりとした金額すら思い浮かばないのであれば、あなたの家計管理は不十分です。
以前解説した家計管理の4ステップのうち、1つ目は
現状把握
でした。
この現状把握を正しく行うには、給与は総額で記録して、その中身を正しく把握する必要があるのです。
健康保険や年金の負担が大きい
ここでは、給与を総額記録すべき理由として、
- 給与が正しく支給されているか確認するため。
- 給与の中身を正しく把握するため。
の2つを解説しました。
給与を総額で記録し、その中身を把握すると、
健康保険や年金保険の負担が思ったより大きい
という印象を持つ方が多いです。
医療費の増大や年金財政の悪化をニュースを見ても、ピンと来ないかもしれません。
しかし、実際に自分が支払っている金額の大きさを知ると、そのことの重大さが身に染みます。
これも、現状把握で得られる効果の1つだといえます。
まとめ
今回の講義では、給与の記録方法として総額記録と純額記録の2種類がありますが、総額記録がオススメであることを解説しました。
また、給与の総額記録では、次の3項目を記録することを解説しました。
- 支給項目
- 控除項目
- その他の項目
そして、給与を総額記録すべき理由としては、
- 給与が正しく支給されているか確認するため。
- 給与の中身を正しく把握するため。
の2つが挙げられることを解説しました。
ぜひ、皆さんも給与を総額で記録してみてください。